効率化の為に進化?する製図道具、家のつくられ方。 |
自分が社会に出てからこれまでの間の、大きな時代の変わりようを、
改めて振り返る事になりました。
身近におこっていた「変わりよう」の2例ほどをお話してみようと思います。
学生時代、T定規と三角定規で設計製図に取り組んでいました。
色々な思いをこめながら1本の線をひいていたので、その時の思いが乗り移って、
線に強弱や、勢い、濃淡の違いが有りました。
建築事務所に就職すると、それがドラフターという製図道具に代わり、独立後大分経って
パソコンなるものが登場、キャドによる製図に代わります。
一本の線が一瞬の内にひかれて、抑揚は無いけれどきれいに書けてしまうので、
うっかりすると騙されてしまう。
パソコンが登場した頃には、こんな複雑で面倒なものを扱うのが、
世の趨勢に本当になるのかと、いぶかしがっていたいたのだけれど、
今やパソコンなしでは、夜も日も明けないと言った感じ。
遂に、広くも無い仕事場が、パソコンとその周辺機器や大型コピー機に占拠されてしまう。
パソコンの前に座り、図面を書き、メールを確認し、何かと言えばインターネットを利用して色々なことを調べる毎日。
パソコンに代表されるコンピューターが、つくる建築までも変えようとし始めています。
家のつくられ方も本当に変わりました。
小学校時代、あの伊勢佐木町通りと京浜急行の間を流れている大岡川沿いには
材木店がずらっと並んでいて、そこで大工職が墨付け、刻みをして、
そうして家が建ちました。
大工の棟梁が家づくりの要にいて、始めから終わりまで、
棟梁が誇りをもって見守っていました。
ハウスメーカーのつくる家など馬鹿にしていたものでしたたが、その営業力、宣伝力に
立場は逆転し、大工や関連職は、過酷な労働条件でハウスメーカー他に吸収されていき、
大工の集まらなくなった大岡川沿いの材木店は1軒、2件とつぶれ、
もう大分前に、殆ど姿を消しています。
少し力のある工務店や、地域ビルダーが、ハウスメーカーに対抗していますが、
彼らは、材木店や大工職にではなく、プレカット工場に柱梁などの構造材の材と加工を委ねてしまう。
そんな訳で、かつての無数にあった材木店に変わって、大規模プレカット工場が
住宅の構造材流通の末端と加工をになっています。
極めて短期間で加工された構造材が建設現場に運ばれ上棟すると、
工務店、あるいは地域ビルダーの傘下に流れた、一方の大工職の手によって
造作工事が進められる。
造作工事といっても、手間のかかる部材は、外部のいわゆる加工場にまわされ、
大工職の仕事は部材の取り付けに集中するといった感じになっています。
家づくりの工程は切れきれに分断され、
現場監督のコントロール下におかれるることになりました。
総じて、スケールアップし、効率があがり、安くはなっているのですが、
その分、何かせわしくなり、誰かが頑張らないと、何かが削り落とされてしまう。
実は、私自身、古くからの大工職の家系の末裔で、小さい頃亡くなった父や
2人の兄も大工の棟梁だったので、これらの移り変わりを、身にしみて、目撃してきました。
娘が薦めてくれた「コーチング」(山田淳子/井上将司著、ライトワークス発行)と言う本に
今の世の中の変化が激しく、「過去の体験に基づくコーチング=指導はナンセンスで、
現時点の情報を的確に集め、そこから新たな方法を発見していくように指導するのが
最も有効である」といったことが書かれているそうですが、
僕自身の過去から現在を振り返ってみると、変化のスピードは、確かに、「効率を上げる為に」加速度的に増しているのに気付きます。