見えないものを設計する(3) ―暖気の循環、風 |
3回目の今日は、少し趣を変えて、明るさ・風・暖かさ寒さなどのための見えない工夫について、お話してみたいと思います。
写真はある住宅の玄関から廊下に出た時に出会う、食堂から居間、そして庭に続く空間の1シーンです。
以下の説明を読まれる前に、皆さん、どんな事がこの空間に盛り込まれているか、
一寸、探してみて頂けますか。ひとつでも発見出来ればすごいです。
食堂の上部は4.5畳ほどの広さの吹き抜けになっていて、
さらに、写真には写っていませんが、その吹き抜けの中に浮かぶ階段が屋根上の物見台に出る踊場に続きます。
この住宅は敷地の形状から、南側間口が3、5間、南北方向の奥行き5間という、
奥行きのややある平面形状の為、食堂は居間の北側に位置することになり、
しかも1階左右(東西)に採光のための開口を取れない条件下にありました。
そこで食堂上部を吹き抜けとしその東側に大きな開口をとり、
そこから光を食堂に送ることにしました。
写真では明るいところにピントを合わせているので食堂が、やや暗く写っていますが、
実際には、不自由ない明るさになっていて、南面する居間に対比し、
少し明るさの押えられた、むしろ落ち着いた空間になっています。
居間左、東側の壁に白いパイプが見えます。
これは、冬、1階から吹き抜け、物見台への踊場と3層を上昇する暖気を
温度感知機連動の筒状ファンで居間に戻す大きな暖気循環の仕組みをつくるために用意された下りダクトです。
夏、上昇する熱気は、別に設けられた物見台への踊場のファンで自動的に排熱されます。
食卓右にある廊下間を隔てる腰壁。これは、冬、その右側にある階段を降りてくる
コールドドラフトと呼ばれる冷気を遮るために設けられました。
連続する居間・食堂は勿論、2階の吹き抜けを挟む寝室、子供室にも写真に見えるような開口が設けられ、夏、南北方向に抜ける涼風の為のルートがしっかり用意されています。
食堂上部の吹き抜けは、当然のことですが、この住宅の全ての主要な部屋の気配を
互いに感じることの出来る仕組みになっています。
廊下の床にとられた、木製の格子はその下にある小さな地下室の気配を感じあう為に設けられたものです。
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