見えないものを設計する(10)-田園や都市との関係 |
この家の建て主であるYさん夫妻は、この住宅から少し離れたかなり広い敷地で、土日の休日を利用して、畑仕事を楽しんでいました。
打合せが終わると、いつも、その畑の収穫物である野菜をお土産に頂いて帰りました。
はじめて畑に案内して頂いた時に乗せてもらった車のうしろに、なんと、可愛いミニ耕耘機を見つけてびっくりしたのを思い出します。
その車のための駐車場は「木の家13」の南側の庭、西寄り隣地側(写真奥)にとることにしました。
畑作業から帰って、道路からバックで入って、車を停めると、収穫物や畑道具の
一時置き場用に、バルコニー下の土間が用意されています。
土間には野菜を洗う為のシンクが有り、洗った野菜を並べられるように、濡れ縁が、それに続いています。濡れ縁に面した掃き出しのガラス窓を開けると、そこは厨房や居間・食堂。
畑から、駐車場、土間、シンク、濡れ縁、厨房・居間食堂、それらが見えない一本の線でつながって、畑と「木の家13」の厨房・居間食堂が、見事に関係づけられました!
基本設計のスケッチがこんな風にまとまってきた時、私はなんだかとても楽しくなって、「やった-!」と言う気分になって一人悦に入っていました。
一方、東側の玄関を出て、ポーチから階段を何段か下りた位置(写真手前)に、もう1台の車のための駐車場を用意することにしました。夫妻はこの車で、都心部に続く少し離れた駅、あるいは直接、都心部に遠出します。「木の家13」は、これも又、玄関から駐車場を経由して、駅や都心部と見えない1本の線でつながることになりました!
2つの駐車場はこの家の中心的存在である居間・食堂前の庭の東西、対称的な位置に、蟹のはさみのように計画され、そこから伸びる見えない2本の線で、それぞれ、畑と、都市に関係づけられたのです!
写真の2台の車やその駐車場は、「木の家13」の置かれた田園や都市との地理的,
空間的関係を象徴的に表現している、と言えないでしょうか。