透湿と調湿、結露との関係 |
その中で、外壁側で使う調湿性のある内壁仕上げ材の場合、防湿層はいらないのではないかといった話が出ました。
水蒸気は(絶対)湿度の高い方(冬の場合室内側)から低い方(同、外気側)に向かって、壁内を透過し、その途中冷やされて「内部結露」といった問題を引きおこします。
これを防ぐ為に室内側仕上げ材裏に「防湿層」を設け、壁の中に水蒸気を入れない、と言うのが、常識的な考え方になっています。
そうした水蒸気の移動や結露の問題と、室内側仕上げ材の湿気をはいたり吸ったりするいわゆる「調湿性」とはどう関係しあうのか。そのことが説明出来れば、室内側の調湿性のある仕上げ材裏に防湿層が不用であることを証明できる筈です。 以前から、私の頭の片隅に有りながら放置してきたテーマでもあったので、ちょっとその推理に挑戦してみることにしました。
推理した結果を早速、会の掲示板に書き込みましたが、今日、改めて手持ちの関係資料を当り、その推理の正しさを確認しましたので、紹介してみます。
壁(床、屋根も同様)の内外に絶対湿度の差があれば、湿度の高い方から、低い方に、水蒸気は透過する。両側が同じ絶対湿度でもその間の室内側仕上げ材が吸湿性のある材料であれば、材料が周囲の湿度と平衡するまで吸湿される。湿度差が有り水蒸気が透過する過程であっても、同じように平衡状態になるまで吸湿される。([結露をとめる」山田雅士著、井上書院発行)
私のよく使う室内側に張られた杉板の場合で説明しますと、水蒸気が外気側に透過する前に、これを杉板が吸湿し、(個体内の水蒸気の移動ははゆっくりとしたものなので)杉板がある厚さをもち杉板の吸湿容量に達する前に室内側の絶対湿度が下がるような変化があれば、吸湿された水蒸気は逆に室内側に放出されることになり、杉板を越えることはなく、外気側で内部結露を起こさないと言えそうです。
通常の住宅のように、(炊事、洗濯、入浴といった)生活水の使用により昼間から夕刻、絶対湿度が上がり、夜間下がるといっった日変化を繰り返すような状況下では、適当な吸湿容量を持つ厚さのある杉板材であれば、その裏側に防湿層をもたなくても、内部結露を起こさない、と言うことになります。
絶対湿度の高下が1日単位のサイクルを持つか、板厚をどの程度にすべきか、板間の隙間等の要素に対して、どう安全率をみるかに関しての適切な判断が必要ではありますが。